交声曲「海道東征」
さて、昨日行った東京芸術劇場、
何を聴きに行ったかというと、この曲を聴きに行ったのでした。

信時潔作曲の交声曲「海道東征」です。
上のプログラムにも書かれていますが、作詞は北原白秋。
1940年(昭和15年)の神武天皇即位を起源とする、
皇紀2600年を記念した奉祝曲として
作曲された曲で、日向から東征し、大和朝廷を確立した
神武天皇の東征伝説を壮大に歌い上げた曲です。
戦後は、皇国史観につながる歌詞を持つ曲などは
歌詞を変えられたり、演奏を忌避されたりすることが続いていました。
明治時代に創立された私の母校の高校校歌も、
戦前に制定された歌詞には「天皇陛下の弥栄を祈って」的な内容が含まれており、
戦後すぐに歌詞が変えられて、今に続いています。
北原白秋が大和言葉で記したこの曲も、
皇紀2600年記念という作曲の経緯に加え、
冒頭から「神坐しき、蒼空とともに高く、み身坐しき、皇祖」と始まり、
「神と坐す、大御稜威高領らせば、八紘一つ宇とぞ」など、
その筋の方が見たら過剰反応するような歌詞が多いためか、
この曲も長らく演奏機会に恵まれなかったのですが、
平成最後になって、何度か演奏会で取り上げられたり、
ようやくCDが複数枚発売になるなど、
演奏される機会が増えてきました。
私は2003年に発売されたオーケストラ・ニッポニカのCDでこの曲を知って
感動して以来、是非実演を聴いてみたいと思っていたのですが、
今回池袋で演奏されるのを知り、最終新幹線に間に合うかどうか微妙ではありましたが、
思い切って行ってみたのです。
私は主義主張はともかく、とにかくこの曲が素晴らしいので聴きに行ったのですが、
昨日も書いたとおり、主催が産経新聞で、神社本庁後援という物々しい体制。
そのためか、いただいたプログラムをひらいたら、
普段クラッシックの演奏会ではなかなか見かけないチラシが。

そして、天皇陛下御即位三十年奉祝公演という、副題がついているためか、
プログラムより立派な、こんなパンフレットも挟まれていました。

さて、肝心なプログラムですが、
メインの海道東征の前に、
エルガーの威風堂々第1番、ブラームスのハンガリー舞曲第1・第3・第5番、
外山雄三の管弦楽のためのラプソディという前プロ。
指揮は大友直人さん、オケは東京フィルハーモニー交響楽団です。
ノーブル感が高い曲調の威風堂々と、邦人作品の管弦楽のためのラプソディはともかく、
マイナーな3番を含むハンガリー舞曲がなぜ選曲されたのか、謎です。
こういう趣旨の演奏会ならば、
山田耕筰が昭和天皇の御大典を記念して、君が代を主題に書いた
御大典奉祝前奏曲をやればよかったのに、と思ったりします。
ちなみに演奏は可もなく不可もなくの演奏。
昨年は群馬交響楽団ばかり聴いていましたが、
やはり東フィルはそつがない演奏だな、というのが感想です。
4曲やって20分という、さらっとした前プロが終わり、
にもかかわらず20分という長い休憩の後はいよいよ海道東征。
2管編成のオーケストラに、混声合唱、児童合唱、
さらにソプラノ2名、アルト、テノール、バリトン1名という
5名のソリストがつくというなかなか大編成の曲。
第一章の「高千穂」から、第八章の「天業恢弘」まで八章からなり、
西から東へと、神武東征の事象を順に歌い上げていきます。
時に雅楽調、民謡調も交えた平明な曲調もさることながら、
作曲者の信時潔がこだわったという、北原白秋の詩の言葉の美しさが素晴らしい。
日本語の持つ美しさ、格調の高さが曲とマッチし、
非常に感動的です。日本を代表する、栗友会合唱団の発音も素晴らしく、
実演を聴くことができて、本当によかったです。
ただ一つ残念だったのは、ホールがあまりにも大きすぎて、
ソリストの方の声が響きにくかったこと。
こればかりは仕方がないですが、
大賀ホールの音響の素晴らしさを実感しました。
それにしても、こんな名曲が戦後長らく埋もれていたとは本当にもったいない。
戦前に作曲された日本人作曲家の曲は、
音源のみ残り、総譜が空襲により焼けてしまったり、
戦前の中国で発表されたたために、
そのまま楽譜が当局に差し押さえられたままになっているものがあるとも聞きます。
新時代の令和になると、ほどなく2025年には昭和百年を迎えます。
不幸な時代に作曲された曲が、
もっと演奏されるようになるとよいですね。
ちなみに、今年は珍しい演奏会の演奏ラッシュで、
ゴールデンウィーク最終日は、渋谷でこんな演奏会が開かれます。

ゴジラの作曲家として知られる、伊福部昭門下のこの3名の方々は
子供の頃から私が大好きだった作曲家なのですが、
そのあまり演奏機会がない作品がこれだけ一堂に集まるのは、本当に珍しい。
こちらも、軽井沢からで張って聴きに行く予定です。
特に、最後の芥川也寸志遺作の日扇聖人奉賛歌「いのち」は
全編南無妙法蓮華経とお題目が唱えられている上に曲が流れるという
普段なかなか聴けない曲です。楽しみです。
次の目標300万アクセスに向けて、
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何を聴きに行ったかというと、この曲を聴きに行ったのでした。

信時潔作曲の交声曲「海道東征」です。
上のプログラムにも書かれていますが、作詞は北原白秋。
1940年(昭和15年)の神武天皇即位を起源とする、
皇紀2600年を記念した奉祝曲として
作曲された曲で、日向から東征し、大和朝廷を確立した
神武天皇の東征伝説を壮大に歌い上げた曲です。
戦後は、皇国史観につながる歌詞を持つ曲などは
歌詞を変えられたり、演奏を忌避されたりすることが続いていました。
明治時代に創立された私の母校の高校校歌も、
戦前に制定された歌詞には「天皇陛下の弥栄を祈って」的な内容が含まれており、
戦後すぐに歌詞が変えられて、今に続いています。
北原白秋が大和言葉で記したこの曲も、
皇紀2600年記念という作曲の経緯に加え、
冒頭から「神坐しき、蒼空とともに高く、み身坐しき、皇祖」と始まり、
「神と坐す、大御稜威高領らせば、八紘一つ宇とぞ」など、
その筋の方が見たら過剰反応するような歌詞が多いためか、
この曲も長らく演奏機会に恵まれなかったのですが、
平成最後になって、何度か演奏会で取り上げられたり、
ようやくCDが複数枚発売になるなど、
演奏される機会が増えてきました。
私は2003年に発売されたオーケストラ・ニッポニカのCDでこの曲を知って
感動して以来、是非実演を聴いてみたいと思っていたのですが、
今回池袋で演奏されるのを知り、最終新幹線に間に合うかどうか微妙ではありましたが、
思い切って行ってみたのです。
私は主義主張はともかく、とにかくこの曲が素晴らしいので聴きに行ったのですが、
昨日も書いたとおり、主催が産経新聞で、神社本庁後援という物々しい体制。
そのためか、いただいたプログラムをひらいたら、
普段クラッシックの演奏会ではなかなか見かけないチラシが。

そして、天皇陛下御即位三十年奉祝公演という、副題がついているためか、
プログラムより立派な、こんなパンフレットも挟まれていました。

さて、肝心なプログラムですが、
メインの海道東征の前に、
エルガーの威風堂々第1番、ブラームスのハンガリー舞曲第1・第3・第5番、
外山雄三の管弦楽のためのラプソディという前プロ。
指揮は大友直人さん、オケは東京フィルハーモニー交響楽団です。
ノーブル感が高い曲調の威風堂々と、邦人作品の管弦楽のためのラプソディはともかく、
マイナーな3番を含むハンガリー舞曲がなぜ選曲されたのか、謎です。
こういう趣旨の演奏会ならば、
山田耕筰が昭和天皇の御大典を記念して、君が代を主題に書いた
御大典奉祝前奏曲をやればよかったのに、と思ったりします。
ちなみに演奏は可もなく不可もなくの演奏。
昨年は群馬交響楽団ばかり聴いていましたが、
やはり東フィルはそつがない演奏だな、というのが感想です。
4曲やって20分という、さらっとした前プロが終わり、
にもかかわらず20分という長い休憩の後はいよいよ海道東征。
2管編成のオーケストラに、混声合唱、児童合唱、
さらにソプラノ2名、アルト、テノール、バリトン1名という
5名のソリストがつくというなかなか大編成の曲。
第一章の「高千穂」から、第八章の「天業恢弘」まで八章からなり、
西から東へと、神武東征の事象を順に歌い上げていきます。
時に雅楽調、民謡調も交えた平明な曲調もさることながら、
作曲者の信時潔がこだわったという、北原白秋の詩の言葉の美しさが素晴らしい。
日本語の持つ美しさ、格調の高さが曲とマッチし、
非常に感動的です。日本を代表する、栗友会合唱団の発音も素晴らしく、
実演を聴くことができて、本当によかったです。
ただ一つ残念だったのは、ホールがあまりにも大きすぎて、
ソリストの方の声が響きにくかったこと。
こればかりは仕方がないですが、
大賀ホールの音響の素晴らしさを実感しました。
それにしても、こんな名曲が戦後長らく埋もれていたとは本当にもったいない。
戦前に作曲された日本人作曲家の曲は、
音源のみ残り、総譜が空襲により焼けてしまったり、
戦前の中国で発表されたたために、
そのまま楽譜が当局に差し押さえられたままになっているものがあるとも聞きます。
新時代の令和になると、ほどなく2025年には昭和百年を迎えます。
不幸な時代に作曲された曲が、
もっと演奏されるようになるとよいですね。
ちなみに、今年は珍しい演奏会の演奏ラッシュで、
ゴールデンウィーク最終日は、渋谷でこんな演奏会が開かれます。

ゴジラの作曲家として知られる、伊福部昭門下のこの3名の方々は
子供の頃から私が大好きだった作曲家なのですが、
そのあまり演奏機会がない作品がこれだけ一堂に集まるのは、本当に珍しい。
こちらも、軽井沢からで張って聴きに行く予定です。
特に、最後の芥川也寸志遺作の日扇聖人奉賛歌「いのち」は
全編南無妙法蓮華経とお題目が唱えられている上に曲が流れるという
普段なかなか聴けない曲です。楽しみです。
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